簡単解説!PFCバランスって?歴史から読み解く!

PFCバランスって何?

学校や会社、スポーツジム、または病院などで「PFCバランスを意識した食事を摂りましょう」と言われた事がありませんか??

あまり聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんが、少し栄養の勉強をしたりダイエットをしよう!と心がけたことのある方なら一度は聞いたことのあるワードですよね。

今回は管理栄養士として普段から栄養価計算、栄養指導をしている私がPFCバランスについて解説していきます。

PFCバランスの定義

栄養士と野菜や果物

PFCバランスとは3大栄養素ともいわれる

  • P「タンパク質(protein)」
  • F「脂質   (fat)」
  • C「炭水化物 (carbo)」

の摂取量のバランスのことです。

これらの3つの栄養素が主にカロリー(エネルギー)となり私たちの身体を支えてくれているメインエネルギー供給源のような存在です。

このPFCのバランスは厚生労働省により決められたバランスで、数十年にわたる日本人の食事と病気のデータから緻密に計算された結果作られた割合です。

その割合が摂取カロリーを100%としたときにおいて

P「タンパク質(protein)」 12~15%
F「脂質   (fat)」   20~30%
C「炭水化物 (carbo)」   60~68%

と定義されています。

毎日この割合で食べる、というよりは1週間、1ヶ月という長いスパンで見てPFCバランスの割合で食べることが出来ていると「最も病気になりにくい」と、国が発表している割合だ、ということです。

PCFバランスはなぜできたのか?

多くの人の疑問点 質問 クエスチョンマーク

このPFCバランスがなぜ定義付けされたのか気になりませんか?

「朝バナナは身体にいい」とだけ聞いても「なんとなく、そうなんかなぁ、、。」と半信半疑に1日2日、朝にバナナを取り入れてみてなかなか続けられなかったりしますよね。

だけど、バナナは食物繊維が豊富だから、朝から腸内環境をキレイに整えてくれて快便に導きます。

なおかつ、ビタミンが豊富なので、この夏の紫外線対策にもピッタリで、精製されていない糖質が豊富なので、朝から頭の回転を良くしてくれるため仕事でのパフォーマンスが爆上がりします。

なので、朝バナナは身体にいい。

と、「理由」や「原因」をしっかりと伝えられると意気込んで生活に取り入れよう!!という気持ちになりますよね。

PFCバランスが誕生した理由についてまずは知って、一緒にPFCバランスを生活に取り入れてみましょう!

PFCバランスの歴史

ノートに書き出す女性の手元

そもそも「栄養学」とは、1871年(明治4年)ドイツ医学で教えたドイツ人ホフマンによって、栄養についての知識が日本に伝えられたことからスタートしました。

「栄養学」という概念はもともと日本には無かった、輸入の文化だったのですね。

そこから様々な学者がビタミンについての研究発表や主食論争(主食に適した穀物はなにか)などが行われていました。

後に第二次世界大戦が起こり、終戦後、日本は食の西洋化が進み、日本文化である「米」の摂取量が減り、西洋文化である「おかず」の摂取量が増加していきます。

もとの日本食文化からどんどん遠ざかり、学校給食も「脱脂粉乳、パン、缶詰」といった乳製品、小麦、加工品の摂取量がますます上がっていったのです。

特に日本の食文化は、1950年から1975年の間に劇的に変化し、牛乳15倍、肉、鶏肉や卵は7.5倍、脂肪は6倍となり、一方で米の消費量は0.7倍に減少しました。

この時代の日本人は、大変な飢餓状態にある人が多かったため西洋文化を受け入れるほかなかったのです。

しかし、後にフランスの農学者、ジョセフ・クラッツマンが日本の伝統的食生活であるタンパク質・脂質・炭水化物のカロリー比率が理想的、と唱えました。

このため方針の転換がなされ、1983年(昭和58年)には農林水産省から「私達の望ましい食生活-日本型食生活のあり方を求めて」により、米や野菜を中心として動物性脂肪や砂糖や塩分のとりすぎを避けるという「日本型食生活」が提案されたのです。

1985年(昭和60年)には、それまで欧米風の食生活の普及を推し進めていた厚生省も「健康づくりのための食生活指針」を策定し、PFCバランスを理想と掲げ始めました。

それから何年もの日本人の食事と病気のデータからリスクの最も少ない割合を算出していったのが、現在のPFCバランスということです。

一度は西洋文化に染まりながらも日本食文化が健康的だということに改めて気づくことができ、国ぐるみで「伝統的な日本食文化」の食のバランスを提唱していった、という訳ですね。

PFCバランスが乱れる現代の日本

ダイエットのために食事を記録するノート

そのようにして確立されてきた現在のPFCバランスですが、実際どれくらいの人々がその割合に沿って食べられているのか?を検証していきたいと思います!

実際のPFCバランス値比較

実際私が500人以上のPFCバランスのデータを見てきて総合的に感じるポイントが「炭水化物摂取が少なく、脂質の摂取が多い」ということです。

このデータは特に太っていたり、ダイエットに行き詰まっている方にかなり多いデータになっていて、食べる量がすごく少ないのにPFCバランスがぐちゃぐちゃなので(特に炭水化物摂取が極端に少なく、脂質摂取が多い)どれだけカロリー制限をしても痩せない、という結果になってしまっているのです。

よくある流れとしては

「ダイエット始めよう!!」
「そのためには、米は抜かないとダメだよね。。。」
「米抜くとお腹がすくから、揚げ物でチャージ!ご飯食べすぎるよりいいでしょ!」
「ダイエット食、ダイエットジュースで栄養補給!」

「なんで、こんなに頑張ってるのにいつまで経っても痩せないの!?!?」

の、繰り返し。

ウエストを計る太った男性

それもそのはずでこういう方のPFCバランスを見てみると

P「タンパク質(protein)」 20%
F「脂質   (fat)」   70%
C「炭水化物 (carbo)」   10%

みたいな感じになっている方が本当に多いんですよ。

確認のために理想値をもう一度載せます。

P「タンパク質(protein)」 12~15%
F「脂質   (fat)」   20~30%
C「炭水化物 (carbo)」   60~68%

全然違うのが分かりますか?

何度も書きますが、PFCバランスの理想値は病気のリスクを最小限に抑えるための摂取カロリーの割合ですので、全く理想値に当てはまっていない事がわかります。

こうなると、どれだけカロリー摂取を控えていても、血液がドロドロになり脳血管がつまり、脳梗塞にもなりやすくなるし、内蔵脂肪の増加でウエストも太くなるし、脂肪肝や高コレステロール血症も起こりやすくなります。

きわめつけにエネルギー不足で、脳に栄養が回らないため、頭の回転が極度に落ちてパフォーマンス低下や人間関係の悪化にももちろん繋がります。

そうなると精神疾患、自ら命を落とすことにも繋がりかねないのです。

これは決して大げさな表現ではありません。

このようなPFCバランスを崩した生活を続けていれば誰にでも起こりうる現象です。

そして、現代の日本人ではしっかりとご飯を食べるという意識が少なくなっている傾向にあり(加工食品や、インスタント食、スナック菓子など)崩れたPFCバランスで食生活をおくっている方が非常に多い状態だということです。

PFCバランスが最強だった我々の祖先

ご飯のお供おかず

実は健康寿命が最も長かった時代は江戸時代だったって知っていましたか?

平均寿命こそ短かったけれどその原因のほとんどは

感染病
乳幼児期の死亡
命の価値が低かったため安易に殺される

などで、これらを除けば現在よりも健康寿命が断然長かった時代と言われています。

江戸時代のPFCバランスは

P「タンパク質(protein)」 10%
F「脂質   (fat)」   10%以下
C「炭水化物 (carbo)」   70~80%

理想値は

P「タンパク質(protein)」 12~15%
F「脂質   (fat)」   20~30%
C「炭水化物 (carbo)」   60~68%

炭水化物の摂取量が顕著に多いのがわかりますね。

当時の国民の食事のメインはとにかく米、玄米、ひえ、あわ などの穀物で、脂質摂取は現在とくらべてかなり低かったということが分かります。

ちなみに、穀物は精製しないものを食べる事がほとんどだったので、胚芽についている天然のビタミンやミネラルをたっぷりと摂取できていたのでバランスよく微量栄養素も一緒に自然と摂取できていたのです。

肉は基本的には食べる習慣がないのと、乳製品もまだ基本的にはなかったので脂質の摂取も自然と少なかったみたいですね。

このような食生活で本当に健康が保てたのか?疑ってしまいたくなりますよね。

農家の女性たち

山形・山居倉庫資料館 より引用

こちらの写真をよく御覧ください。

なんと、農家の女性が米俵(一俵60kg)を5俵も背負っています。

300kgもの重さのものをいとも簡単に持ち上げてしまうような筋力のある女性がたくさんいたとか、、、。

そしてまた江戸時代の郵便局員とも言える飛脚はなんと、江戸から京都までの約492キロを3〜4日で走り手紙を届けていたと言われています。(ちなみに徒歩だと約2週間もかかる距離です)

西洋からきた食事研究家が日本人のずば抜けた体力と筋力に驚愕し、彼らがどんな食事をしているのか見てみたところ、あまりにも質素な食事だったので日本人に西洋食(肉、乳製品、小麦など)を与えたらもっとパワーが増すのではないか、と思いつき西洋食を一定期間与え、体力筋力の経過を見たという実験がありました。

結果は、体力、筋力ともに顕著に低下してしまいパフォーマンスが低下した、という結果になりました。

再び元の日本食に戻すとまた、体力と筋力は元通りになったそうで、西洋からきた食事研究家が日本食の素晴らしさに驚いたという記録が残っています。

現代では江戸時代での食生活の再現もなかなか難しい部分が多いので(飽食文化、バラエティ豊かな食、食の西洋化、農薬使用など)江戸時代のPFCバランスを目指すのが困難な状態かもしれませんが、せめて、今よりも少しでも炭水化物摂取量を増やし、脂質摂取量を減らす意識をすることによって今よりも更にエネルギッシュでパワフルな日々を送ることができそうですよね!

PFCバランスを整えるメリット

青空・風船の中で両手を広げる女性

PFCバランスが乱れると(特に炭水化物が少なく、脂質が多い状態)様々な病気のリスクや生活の満足度低下に繋がる、ということが分かりました。

反対にPFCバランスを整えると

・脳の活性化
・人間関係良好
・バイタリティUP
・健康的な身体GET

などこれ以上にも数え切れないほどのメリットがあります。

まとめ

PFCバランスを整えるにはまずは、今の自分のPFCバランスを知る必要があります。

スマホのアプリに食事入力をしてAIが計算して算出してくれる機能を活用したり、身近な管理栄養士や栄養士に頼んだり、アウトソーシングサービスを利用したり、やり方は様々ありますが「一度自分のPFCバランスを知る」ことは、病気にならないためのはじめの一歩になります。

まずは「自分のPFCバランスを調べる」ことから初めてみてくださいね!

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