管理栄養士が教える、便秘を改善してダイエットを成功させる方法

便秘は女性に多いイメージですが、実は、男性も年々有症率が上がる症状で、QOLの低下に繋がります。

また、意外かもしれませんが便秘はダイエットにも影響します。

私は普段からダイエットの食事指導をしていて、便秘のために体重が落ちにくい人をたくさん見てきました。

今日はこの便秘について管理栄養士の視点から詳しく解説していきます。

便秘の定義

白衣の専門家

まず、便秘とは「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」のことを差します。

また便秘の中でも「便秘による症状が現れ、検査や治療を必要とする状態」のことを便秘症と呼びます。

では、具体的に便秘症の診断基準をチェックしていきましょう。

「便秘症」の診断基準 ※慢性便秘症診療ガイドライン2017より

・排便の4分の1超の頻度で、強くいきむ必要がある。

・排便の4分の1超の頻度で、兎糞状便または硬便(BSFSでタイプ1か2)である。

・排便の4分の1超の頻度で、残便感を感じる。

・排便の4分の1超の頻度で、直腸肛門の閉塞感や排便困難感がある。

・排便の4分の1超の頻度で、用手的な排便介助が必要である(摘便・会陰部圧迫など)。

・自発的な排便回数が、週に3回未満である。

いかがでしたでしょうか?

意外と当てはまる方も多いのではないでしょうか。

あなたも上記の症状に2つ以上当てはまる場合、便秘症の状態かもしれません。

便秘が及ぼす問題

次に便秘があると何が問題になるのかを考えていきましょう。

理由は大きく2つあります。

QOL&労働生産性の低下に繋がる

パソコンの前で頭を抱え込む男性

1つ目は「QOL&労働生産性の低下に繋がる」から。

便秘について調べてみると、厚生労働省のホームページには

「快便は快食、快眠と並んで健康的な生活を支える三原則」

と書かれており、健康管理の一つとしても非常に重要視されていることがわかります。

それでは、便秘によって起こりうる自覚症状について見ていきましょう。

便秘になると具体的には

ガスが溜まることによる腹部膨満感、おならの増加
いぼ痔や切れ痔の増加
血行不良から肩こりや肌荒れになりやすい

といった症状が現れることがあります。

例えば、日々忙しく働く中で、

  • 自分が担当した重要な打ち合わせ中にお腹の張りや、ガスが出てトイレに行く回数が増加、重要な会議のテーマに集中できない!
  • いつからか痔になりお尻が痛くて長い会議に最後まで耐えられない!

といったことが起きるかもしれません。

また、便が固くなることから肛門が切れやすく痔になりやすくなります。

痛みや出血のため、便意を我慢してしまうとさらに便が固くなる悪循環に陥ることがあります。

さらに、便秘は肩こりも引き起こします。

てっきりパソコン仕事が原因で肩こりになっている、と思いストレッチなどで体をほぐしたりしても、原因は別にあるので改善されないかもしれません。

これらの症状は耐えられないほどの苦痛ではないかもしれませんが、毎日この状況が続いたとしたら、どうでしょうか?

QOLや労働生産性は著しく低下し、あなたの本来のパフォーマンスを発揮できないかもしれません。

このような症状を感じる前に、よりよいコンディションで働くためにも、より良いパフォーマンスを発揮するためにも食事や生活習慣を改善し、便秘症を未然に防ぐことが重要だと思いませんか?

ダイエットの邪魔をする

2つ目は「あなたのダイエットを邪魔する」から。

少し話がそれますが、特定健診保健指導という言葉をご存じでしょうか?

40歳以上の人全員を対象に、国を挙げて行っているメタボリックシンドロームへの対策のための健診で、ウエストの基準値と血液検査の結果で該当した人を対象に、管理栄養士と保健師が食事指導を行うものです。

なぜ40代からが対象になるのか?というと毎年人間の代謝は落ちていくので、痩せにくくなるからです。

40歳を越えてくると若いころと同じ食事をとっていても、徐々にお腹周りが大きくなってくるのはこのためです。

実は便秘は「ダイエットを邪魔する原因となりうる」のです。

次になぜ便秘がダイエットの邪魔をするのか見ていきましょう。

便秘の知られざるダイエットへの悪影響

できない自分

人は口から食べた食べ物を、まず小腸で消化吸収し、その残りのカスを大腸で便に変え体の外へ排出しています。

そして腸はこの働きを「蠕動運動」という動きによって行っています。

つまり、食べたものを身体が活用するための重要な器官が「腸」ということです。

便秘によって、本来身体から出ていくべき老廃物が腸に残っていると、これが邪魔になり腸が本来の働きを発揮することが出来ません。

つまり胃腸の動きが鈍くなってしまうということです。

また、便は腸内細菌や、食べたものの残りカス、少量の脂肪や糖質を含んでいます。

本来出ていくはずの脂質や糖質が残っていると、腸がこれを吸収しすぎてしまい、「皮下脂肪の増加」に繋がってしまいます。

また、腸は便の中の水分を吸収するのですが、便秘で腸に便が残り続けると腸からの水分の吸収が続いてしまい、腸に水分が溜まってむくんでしまうことがあります。

人の身体は約60%が水分で、身体の中の水分量は体重を大きく左右してくる大きな要因の一つです。

むくんだ状態の腸は、蠕動運動がしっかりと行えないため、適切に便を作ることや食べ物の消化が出来ないわけです。

また、浮腫みは身体中の血液の巡りを悪くするので、全身の代謝も下げてしまいます。

「便秘によって胃腸の動きが悪くなると、浮腫みでの水分増加や余分な脂質糖質を吸収してしまい結果全身の代謝も下がってしまう」

ということです。

ミドル世代に多い便秘の落とし穴

ダイエットのためや便秘のためにやっていることが、実は便秘を招く原因になっていることがあります。

糖質制限

朝食 和食

お米を食べない、など炭水化物を抑える糖質制限が流行していますよね。

誰でも「糖質制限、ロカボ」などの言葉を耳にしたことがあるはずです。

しかし実は、これが便秘の1つの原因となっているんです。

私のお客様でも、

「某有名パーソナルトレーニングを受け始めて、炭水化物を抑えた食事に変えてから、便通が悪くなった」
「お米を食べないようになってからお通じの頻度が減ってしまった、なんだかスッキリしない」

という声も多いです。

では、どうして糖質制限をすると便秘になってしまうのでしょうか?

その答えは

「穀類から摂取できるはずの豊富な食物繊維が摂取できていない」

からです。

というのも、ご飯軽く1膳150g中には食物繊維が約1.8g含まれています。

さらに、押し麦だと食物繊維はさらに豊富で、150gあたり約5gの食物繊維が摂れます。

1日2食食べるとすると、糖質制限をしている人は約3.6-10g/日の食物繊維が減ってしまうことに。

こんな時に糖質制限のお客様へ私が勧めるのは「1日2食はお米を食べる事」

お通じの材料である食物繊維が不足しないよう、押し麦入りのお米など、食物繊維が多い「茶色い炭水化物」を食べることをおすすめします。

食物繊維の不足

栄養士と野菜や果物

お通じの材料は、腸内細菌、腸の細胞、食べたもののカスです。

食物繊維は人の身体で消化されにくい成分で、便の材料になります。

そこで、食物繊維が便秘にならないためにどのくらい必要なのか調べたところ、

「成人の研究では1日150gの便量を得るには1日20~30gの食物繊維の摂取が必要。」
※公益財団法人日本医療機能評価機構より

とありました。

次に実際に摂取している食物繊維の量についても調べたところ、40代男性での食物繊維摂取量は1日に17gでした。

不足していることがわかりますね。

では、「食物繊維のあるものをとにかくとれば良い」と思いますよね。

実は、これは間違いです。

やみくもに食物繊維をとるだけでは便秘は改善できません。

食物繊維には種類があり、

水に溶ける水溶性食物繊維
水に溶けにくい不溶性食物線維

があるのです。

この食物繊維を「1:2の割合で摂ること」が重要なのです。

というのも、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は便を作る上での働きが異なっているため、両方をバランスよく取ることが必要です。

水溶性の食物繊維は水を含んでくれるので、便に水分を増やし軟らかい便にしてくれます。

このため排便がスムーズになります。

不溶性の食物繊維は便の材料になり便の全体量が増えます。

また便の量が増えると腸は刺激されるので、蠕動運動が促されます。

食物繊維のイメージとして不溶性の方にスポットが当たりがちで、根菜や切干大根などの乾物、きのこを多く食べる人がいますが、これらは大部分が不溶性食物繊維のため、便の量は増えますが軟らかさは作りだせません。

むしろ意識してとりたいのは「茶色の穀物、野菜、海藻類、果物」に含まれる水溶性食物繊維の方なのです。

そこで、以下の食材を意識して選ぶようにしていくのがおすすめです。

  • 大麦やライ麦、オーツ麦などの茶色の穀類
  • 納豆
  • わかめや昆布、さといもなどの粘りのある食材

これらは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がおおむね1:2の割合の黄金バランスが確保できる食材です。

さらに水溶性食物繊維は血糖値やコレステロールの上昇も抑える働きがあるため、日々積極的に摂っていくことで健康診断の結果まで改善できるかもしれません。

意外な便秘対策の生活の3つのポイント

これまで食事ついて触れてきましたが、食事以外にも重要なポイントを3つご紹介します。

睡眠時間を確保する

時計と睡眠中の男性

胃腸は蠕動運動をすることで、便を運んでいます。

胃腸の働きを調整しているのは自律神経で、この自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあります。

交感神経は集中するときや、緊張するときに優位になり、
副交感神経はリラックス時や睡眠中に優位になります。

便秘で重要なのは後者の副交感神経です。

この副交感神経が優位に働くのが、睡眠中です。

このため副交感神経が働く睡眠中に、しっかりと腸が動くようにすることがポイントとなります。

飲み会での深酒で睡眠の質が低下したり、残業続きで睡眠時間が短縮しないように注意していきましょう。

お酒はほどほどにして、早く帰れる日には真っすぐ帰宅して睡眠時間を確保することが大事です。

朝ごはんを食べる

和食の朝食

朝ご飯は眠っている腸を目覚めさせてくれて胃腸の働きを活発にしてくれるスイッチの役割をしています。

また、腸の蠕動は実は朝が一番大きい時間帯です。

便を出すには最大のチャンスである時間帯は朝です。

ぜひ、朝ごはんを食べていない人はまずは何かしら口にするようにしていきましょう。

朝ごはんを食べることのメリットは便秘の対策以外にもあります。

それはエネルギー補給が出来る点です。

睡眠中も人の心臓や肺は動いているので、身体はエネルギーを消費しています。

朝目覚めたときには身体はエネルギー不足の為、朝ごはんでエネルギー補給をすることで1日元気に活動をすることが出来ます。

さらに朝に炭水化物とたんぱく質を取ることは、代謝が高まる効果もあるためダイエットにも良く、一石二鳥です。

トイレの時間を確保する

朝、トイレにゆとりをもって座れるようにすることも非常に重要です。

40代の働き盛りの人の生活を想像すると、朝から晩まで部下への対応や取引先との交渉、日々タイトなスケジュールの中で生活している人も多いはずです。

忙しさから、いつのまにか自分の時間が後回しになってしまい、トイレにゆっくりと座れる時間が短くなると、人の身体は便意に気付きにくくなっていきます。

便意に気が付かずトイレに行かないことが増えていくことで、便秘はどんどん悪化してしまう負のサイクルに陥ります。

負のサイクルに入らないためにも、朝はトイレで自分の身体や腸と向き合う時間を取るようにしていきましょう。

朝すっきりとお通じが出ると、身体は軽くなり1日のコンディションも良い方向へと変わっていきますよ。

まとめ

腹痛でお腹を押さえている男性

いかがでしたでしょうか?

便秘は腹部の膨満感や痔、肩こりといった症状が出るだけではなく、代謝が下がるためダイエットにまで大きな影響を及ぼしていることがわかりました。

長い人生を健康でより良いものにしていくためにも、便秘への対策は重要です。

この機会に日々の食事や生活習慣の見直しをし、便秘にならない身体づくりを始めてみてください。

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